10月16日 そしてデリーよ、ただいま


快適な車内でうとうとし、目覚めると朝6時。夜は明けている。ヘタなホテルよりゆっくり休めたような気はする。友人Sはまだ夢の中。

ぼそぼそとカロリー・メイトを食べながら窓の外を流れる景色を眺める。

民家の多い所を走っている。地域によって家の作りが違うのが面白い。土を固めたようなどすんとした四角い家があるかと思えは、木片を瓦のように葺いた家もある。

壁なんかなくて、柱にワラを被せて屋根だけ作った家なんかもザラ。いろんな人々の生活の横を通りすぎていく。一生こんな列車に乗らない人も多いことだろう。

自分が住む国の大きさも知らない人達は、どんな思いで列車を眺めているのだろうか。

デリー到着予定は正午頃である。こんなにゆっくりできる機会もなかなかないから、堪能しよう。するとドアがノックされ、乗務員がチャイを持ってきた。

どうせ有料なんやろな・・・と思いつつもせっかくなんで頂く。ポットから注いだ2杯目を飲み終わる頃、友人Sが目を覚ました。

半分覚醒していない彼女にチャイをすすめ、ぼ〜っとしたときを過ごす。するとまた乗務員がやってきて、「朝食はいるか?」と聞いてきた。

まだ先は長いのでこれまた頂くことに。

予想はしていたが30分待っても1時間待っても来ない。なのに乗務員は通路をやたらウロウロしている。しかも不機嫌そうに。

トイレに行くついでに偵察してみると、1等車両の客はほとんどが外国人観光客で、やはり朝食があまりに来ないので呼び出しボタンで乗務員を呼んで

文句を言っているらしかった。そりゃ、あっちこっちからしょっちゅう呼ばれて文句言われてりゃ、ハラも立つわな〜

と思いながら、そのムッとした振るまいが面白くて呼び出しボタンを押してしまう私達。

国営鉄道の乗務員だから、彼等はいわゆる公務員である。どこの国も公務員のやる気のなさは一緒なのね、と新たな発見をしたりして楽しんだ。


結局2時間以上待って、朝食が出てきたのはデリーに着く30分くらい前。あわてて食べさせられたのは乗務員の腹いせか・・・?

ニューデリー駅に降り立って、やっぱりここは都会だと実感。人や乗り物の数、あと活気が全然違う。

荷物を置きにホテルへ。初日に泊まったのと同じホテルなので、思わず「ただいま〜」なんて言ってしまう。

別に慣れ親しんだ街ではないのに、やけにデリーは懐かしかった。

ちょうどこの日からお祭りが始まったらしく、商店街は飾り付けがされ露店が並んでいる。

コットン生地やカラフルで安っぽい食器、胡散臭いマニキュアや口紅、おもちゃなんかもある。ただ質が悪いので、残念ながら心惹かれる物はなかった。

ガイドブックで見つけた紅茶屋さんに行きたくて、オートリクシャを捕まえる。

最初の値段交渉の無意味さを散々味わった私達はさっさと乗りこみ、降りる時に運ちゃんが言ったバカ高い値段を無視し、妥当と思われる金額を差し出した。

運ちゃんは「No、No!安すぎる」と言って受け取ろうとしなかったが、「じゃあタダでいいのね〜ん」と歩きだすと慌てて追ってきて、しぶしぶ10Rsを受け取った。

それでも現地人より払ってるはず。「おっちゃん、ウチ等初めてちゃうねんで〜」日本語を解さない彼にも迫力は伝わったようだ。


紅茶GETの後は、デリーで(インドで?)唯一のスーパーマーケットへ。ちょっと歩こうよって事で、何度も道を聞きながら大通りを歩いてく。

そういえば街中で歩いているインド人ってほとんど見かけない。

だから道も歩くようには出来ていない。歩道がなかったり、あってもつぶれてたり。

そんな土地柄故か、ちょっとした距離を歩こうという人間は珍しがられて、道を聞く度に感嘆され励まされてしまった。

<ようやく探し当てたスーパーは出入り口に警備員が感じ悪く座っている。その割に品揃えは大した事なくて、肩透かしだった。

あるのはお米と紅茶とビスケット、これらはすごい種類が揃っていてフロアの大半を占めている。そしてそれ以外のものはあまり無い。

調理済食品(缶詰瓶詰めレトルト)とかインスタント食品、あとインド風のお菓子が欲しかったてんちょ、やられた〜って気分でした。

おまけに出る時は例の警備員にレシートと品物を見せなければいけなくて、気ぃ悪い。

あまり収穫のない一日だった。ま、買い物はほとんど済んではいたんだが。


インドで過ごす最後の夜。心残りのないように大好きになったサモサをお腹いっぱい食べる。

良いレストランにも行ったけど、結局ハマッたのは現地人むけキョ−レツスパイシー・スナックだったり。

恐らく、この暑くて濃度のある空気の中でしかおいしいと思えないであろう、スパイス効きすぎの味はここでしか味わえない最高のご馳走だと思う。

上品な料理なら、かなりレベルの高いのが日本でも食べられるからね。

とうとう明日の夕方の飛行機に乗る。荷物の整理も完璧。ここまでくると後はトラブル無く帰る事に意識が集中する。

もう行きたい所も特にないし、今夜はゆっくり寝ようね・・・とベッドに入る。スムーズに一日が終わったように見えた。

夜中、ノドの乾きで目が覚めたてんちょは、買っておいたミネラルウォーターをぐいぐい〜っと飲んでふと気がついた。

ボトルにガンガーって書いてある〜!!水源がガンガーのメーカーがあるのは事前に知っていた。ずっとそれを注意して避けるようにしてたのに。

今になって凍りついてももう遅い。

そのしばらく後、お約束通り激しい腹痛で目覚めさせられたのは言うまでも無い。


つづく