10月10日  アーグラー&ファティプル・シークリ

アーグラーでのゆったりした朝が明ける。友人Sは今日が22歳の誕生日。おめでと〜♪と言った後、朝食へ。

ここのホテルのレストランは評判がイイらしい。インドではヨーグルトをどこででも食べられるのが嬉しい。

軽めにラッシーとマサラオムレツといく。例のすかすかオムレツにグリーンチリとトマトを入れたものだが、これがイケル。

こんな感じで朝はゴキゲンであった。朝は・・・。

今日こそは憧れのタージマハールへ。ホテルからはわずか2キロなので歩く。朝の散歩はイイ気分。

一番外の門を入ると、植物園のように整地されただだっ広い敷地が続く。朝早いなせいか人影はまばら。

緑の中を歩きながら、インドに来てから心静かに自分達だけで歩くのは初めてだと気付く。常に誰かに声を掛けられたり、勝手に誰かが付いて来てたりしてたもんな。

入場券売り場は結構な列だった。そして思わぬ落し穴。入場料がインド人15Rsに対して、外国人は550Rsナリ!その差はなんじゃあぁ(怒)

550って言えばヘタすると標準的インド人の月収くらいじゃなかろうか!?

世界遺産で荒稼ぎしようというインド政府のキタナさには、怒りと共に悲しさを感じた。こんなことせなアカンほど貧しい国なのか・・・。

日本円にして千円以上するよな・・・。」インド的金銭感覚に慣れてきていた二人は一瞬入るのを躊躇う。

だってガイドブックには15Rsって<書いてあったもんだから、余計に悔しい。

しかしこれで入らなければ何の為にはるばるこんな所まできたのやら。唇をかみ締めチケットを購入。

場内はラジオなど音の出るもの、タバコ、ライターなど火の気は持ち込み厳禁である。入り口で手荷物の検査があり、持込禁止物は預けなければならない。

かなりしつこくカバンを探られた挙句、友人Sは携帯とタバコを預けろと言われた。預け所は混雑しており、荷物の置き方もグチャグチャ。

無くさずにちゃんと預かってくれるのか甚だ疑問でる。携帯を無くされては困るのだが・・・。

「スカートの中に隠そうや。」手分けしてウエストに挟み込み、無事通過。

しかしその先で駄目押しにもう一度荷物検査をされた時にゃあ、もう不機嫌満開。(見つかりはしなかったけど)

「あ〜もう朝からっ。」と思って赤砂岩の門をくぐると・・・

白く気高い姿を見た瞬間、不機嫌なんて吹っ飛んだ。ホントになんて綺麗でなんてダイナミックなんだろう!

長年、写真で見ては憧れた物が目の前にある。不思議だった。サンダルを脱いで建物に入ってみる。

壁や天井一面の象嵌装飾がすばらしい。大理石を彫刻してあるのがすばらしい。上の方からの眺めもすばらしい。

しかし暑い・・・。周りが白いので、照り返しも激しく<眩しさも一ハンパではない。

思わず日陰で一休み。インド人達もそこら中で座り込んでいる。現地人の彼等もやはり暑いのか。

世界に名高い名所だけあって、外国人観光客の姿も多い。もちろん日本人も。

ボ〜ッと座っていると、遠足か何からしいインドの中学生くらいの集団に囲まれた。なんじゃ!?

一人の女の子が「一緒に写真撮ってぇ。」と言った。するとそれを合図に20人くらいの子供がわ〜っと私達に詰め寄る

。 目が点になっている間に写真を2枚撮られ、バイバイ。なんだか芸能人気分。

しかし他にも日本人は結構いたのに、なぜ私達を?インド人の服を着た日本人は確かに他に居なかったかったが。

他の日本人はあの猛暑の中でも、大半がジーンズに靴下、スニーカーだったもんなぁ。暑くないのだろうか?

     

この門をくぐると・・・                          これがそびえていた!

タージマハールを後にし、とにかく両替をしなければという事に。予想外の出費でルピーを使い果たしたのだ、畜生。

オートリクシャと値段交渉するが高い!デリーより高いぞ。こんなものまで観光地価格か。

50Rsを何とか30Rsに値切って銀行へ。しか〜し!パスポートが無くては両替出来ないと言われる。

せめてパスポートナンバーさえ分っていれば、率は悪いがその辺の両替所でできたのに・・・。パスポートはホテルの貴重品入れの中。

拗ねてみてもおっちゃんは「ホテルに戻ってもう1回来い。」の一点張り。そんな事したらまた60Rsもかかるやんか!冗談じゃない。

すると成り行きを見守っていた彼等のボス(多分部長さんクラス)が、

「わしのバイクにどっちか一人乗れ。ホテルまで連れて行ってやる。」と申し出てくれたじゃないですか!

銀行の人なら心配はいらないだろうと思い、てんちょが行く事に。

しかし走り出してから気付いたのだが、中型バイクの後ろなんて乗るの、生まれて初めてなワタクシ。

交通ハチャメチャなインドで、ノーヘルでバイク初体験するなんて夢にも思わんかったわ。しかもインドおやじにしがみついて。

それにこの日はラップスカートをはいていたから、油断するとめくれるめくれる。

『何か、何やってんのやろ・・・。』しかしとっても助かったのは事実。おっちゃんありがと。深く感謝しているよ。

彼等の親切のおかげで無駄な出費を免れ、無事両替もでき、チャイまでごちそうになってしまった。

しかもカウンターにいたおっちゃんは「今晩、家にディナーに来ないか?」と誘ってくれたではないか!

これだけ迷惑をかけたのに、ど〜ゆ〜ワケか気に入ってくれたらしい。

嬉しかったし、インドの一般家庭にもとっても興味はあったのだが、迷った挙句丁重にお断りした。会話を楽しめるほど英語出来ないんやもん。

「私は悲しい。」と言うおっちゃんに精一杯のお詫びと感謝を伝え、握手して銀行を後にした。朝とは裏腹に、暖かい気持ちで満たされていた。


その辺にいた犬                            その辺にいたヤギ

外には銀行までウチ等を連れてきた運転手、プーランが待っていて何処に行くかと言う。

この後はバスで1時間ほど行ったファティプール・シークリーという所にある遺跡を見に行く予定になっていた。

バススタンドまで15Rsというから乗ることに。でも多分真っ直ぐは行ってくれんのだろうな〜と思ってたら案の定、

彼はインド人お得意「only 見るだけね。」と言いながらアクセサリーショップの前で止まった。

絨毯じゃないから見てみようか・・・興味もあるし。小さな店に一人だけの店員は、自分は学生でアルバイトなのだと言った。そのせいか、押しが弱い。

鍛えられた私達はイイように値切る。結局アメジストのピアスとリングを購入。ピアス約¥500、リング¥700ナリ。ピアスは友人Sと一個ずつ分ける。

てんちょの耳には穴が5個空いていてそれぞれの穴に違うピアスを入れるので、1個しか要らんから。ちなみに友人Sは片穴である)

次は隣の楽器屋へ。インドに来たからにはシタールを生で聞きたかったてんちょは、チャンス!と密かに思う。買う気は無かったが。

店の少年は楽しそうに弾いてくれた。それを楽しそうに聞く私達。

しかし二人共ギターを弾けないので、セールス談義がすぐ途切れる。そこで彼はボンゴのような物を出して叩きだした。

打楽器ならイケルだろうという魂胆か。しかし簡単に見えてやってみると以外に難しい。

インド民族音楽の独特のリズムにもついていけない私達。これまた商談につながらない。

今度こそ終わりか、と思うと今度はスズが。手首足首に着けられるように紐が付いている。

「日本で踊る時にコレを着けると素敵だよ。」

や、踊らへんし・・・。』音楽好き故にここで働いているという感じの少年にはかわいそうだったが、日本で太鼓やスズを鳴らすと近所迷惑になるのだ。ごめんよ。

未舗装の空き地に何台ものバスが集まるスタンドは、砂埃の嵐。

「ファティプール・シークリー行きはあれや。」聞かなくても皆が教えてくれる。インド人のおせっかいも、こういう時はありがたい。

停車中のバスの車内はサウナ状態。日本では確実に10年位前に廃車にされてそうなバスである。エアコンなどあるはずもない。

発車時刻が近づくと(って定刻には出ないのだが)どっと人が乗り込んできた。家族連れが4組ほど。大人も子供も私達をじ〜〜っと見つめる。またか(苦笑)。

しかし30分ほどしたらみんな飽きたようで、それぞれおしゃべりをはじめる。

インド人はとにかく良くしゃべる。知り合いも初対面も関係ないようだ。

しかし商売をやっている人以外は英語が出来ない人が多く、私達とコミュニケーションは不可能。残念だ。まぁこっちも英語、満足にはしゃべれないのだが。

両側に延々と畑が続く道を80分ほどバスは走る。走っていると窓から吹き込む風が心地良い。

着いた所は小さな村、という感じだった。山道を5分ほど登ると、”幻の都”と呼ばれる遺跡はあった。

赤くそびえる巨大な城は、ムガル朝時代に14年間だけ栄えた都だったという。水不足に悩まされて滅びたらしい。

高い高い壁に囲まれた広い広い中庭は、短命で打ち捨てられた都の哀愁が漂っているようでかなり良い雰囲気だった。

    
      まぼろし〜の〜都〜

フリーで入れる所なので、ヒマを持て余した地元の大人や子供がうろうろしている。

インド人の子供はさらって帰りたくなるほどカワイイ子が沢山いる。ジャニーズなんて目ではないぞ。

旅行中に見た中で一番かわいかった子はココで目撃したのだが、賛美の言葉を思わずその辺のヒマな大人にヒンディーに通訳して伝えてもらった。

すると彼は照れながら嬉しそうに笑い、スキップ&全速力でどこまでも走って行った。ルックスだけでなく中身も子供らしくてかわいい〜。日本のガキは見習え。

しかしまたもや落とし穴。帰りのバスを待っていると、近所のホテルの主人が声をかけてきた。

「ウチでチャイでも飲んで待っていればいい。バスが来たら教えるから。」

誘われるがままに行ってお茶していたのだが、バスの知らせは一向に来ない。ここへ来たのが遅かったので時間はすでに18時を回っており、

日は刻一刻と沈んでいく。もしかしてだまされている?そんな思いがよぎり、強引にバススタンドを見に行く事にした。

辺りはもう真っ暗。インドの夜は闇と呼ぶにふさわしい暗さである。こうなると慣れない土地ではひたすら恐ろしい。

バスはそこにあった。嘘ついてたなあの男。しかし満員になるまで出発しないというのだ。

まだガラガラのこのバスは、こんな時間に本当に満員になるのか?なるとしてもいつになることやら・・・。

しかも、なんかヤバそうな目の男が数人乗っている。時間も時間だし、この後乗ってくるのも男ばかりのような雰囲気・・・。

この車内で一時間以上田舎道を行くのは身の危険を感じた。

するとホテルの主人、「700Rs出したらアーグラーのホテルまで自家用車で送ってやる」・・・やられた。とんでもない大金だ。

弱みに付け込まれるのは気分悪かったしお金も惜しかった。が、このバスに乗る気にはなれない。

ハメられたのか運が悪かったのか、もうよく分からないけどとにかく帰りたかった。

日本でタクシーに乗る事考えれば700Rsなんて・・・やっぱりもったいないけど、それどころではなかった。

ホテルに着いてさらにチップを150Rsも取られ、「もっと早い時間に来るべきだったな。」と言い残してヤツは帰って行った。気分はどん底。

しかし身の安全を思えば、コレが一番良かったのであろう。そう思わないと・・・。

どぉぉ〜んよりした気分を直すには、おいしい物を食べるのが一番。出かける気力は残って無かったが、ホテル内に良いレストランがあって良かった。

本場のタンドリーチキンでパワーをつけると、振りかえって話す元気も出てきた。行く時間が遅すぎたのは確かに私達のミスやったんよね。

「今日は金運が無かった日やったな。」

しかし、土産物屋で連勝して調子に乗っていた私達には良いクスリだったのかもしれない。

イヤな気分は一晩寝てこの街で捨てて、明日は移動日。

つづく