讃岐うどんリターンズ 2006年8月記


車出して讃岐うどん巡り行こうよ!
ある日友人3人と飲んでいた時、場が盛り上がって来た所で一人がそう切り出した。
私がハマって以来、何度か熱く語っていたせいもあるかもしれない。そんな訳で一時ほどのブームは
収まっていたとは言え、まだまだアツい讃岐へ繰り出す事となった。
車で周る機会は免許無しの私にとってはなかなか貴重だ。何せ車でしか行けない店の方が多いのだから。
今回は前日に淡路島の友人妹宅にお泊りし、そこから東讃方面へ上陸というコース。
東は有名な店が少ない。それだけに行き先は絞り易い。

7月27日、四国地方が梅雨明けした翌日、これでもか!という程の晴天の下を気持ちよくドライブ。
夏休み入りたての平日はまだ遊びに行く人も少ないようで、だ〜れも走って居ない道を快調に飛ばして
予想以上に早く四国に上陸した。
時間は午前10時過ぎ、最初の本命にしている店の開店は11時半。まずは開いてる店に一軒行っとくか・・・
という事でガイドブックを参考に急遽たどり着いた店は見事な定休日。
い〜わよい〜わよ!それならぁ、他にも候補はあるんやもんねっ!讃岐でうどん屋探しに苦労はしない。
次の的地はちょっと手ごわく、地図を見ながら細い生活道路を迷ってうろうろするハメに。
絶っっ対この近くなんやけど・・・。もう車を止めて歩いて探そうという事になり、用も無い銀行の駐車場に
何食わぬ顔で車を置き炎天下を歩き出した。
数分後、あんなに探して見つからなかった店も、ゆっくり徒歩で探せばあっさり見つかるのがこれまた不思議。
民家の離れのような佇まい、のれんと相当年季の入った木の表札に”吉本食品”の文字。
地味な店構え・・・気付かず通り過ぎたのも無理は無い。讃岐では珍しく無いのだけれど。
カラカラと引き戸を開けると11時前という時間のせいか、お客は近所のおばちゃんっぽい人が一人だけ。
6人がゆったり座れる細長いテーブルが4宅、その横のカウンターで注文するセルフ方式。奥は製麺所に
なっている。狭く、歴史を感じさせながらもさっぱりと小奇麗な店内だ。
メニューは冷やし、ぶっかけ、生醤油等シンプルな数種類、カウンターの上には天ぷらとおにぎり、いなり。
ああ、讃岐のうどん屋だ(感動)。とにかく暑かったので冷やしを注文。先払いで¥180を払う。
今はまだ天ぷらは我慢。数分待って出てきた麺は細め。ねぎの入ったつけ汁が別になっている。
まず一口食べた印象は『や〜さ〜し〜い』
コシは控えめ、冷やしなのにぬるいのはお腹を気遣っての事か?『汁つけんでも味がある』と一人が言ったので
何もつけずに1本食べてみたら、意外にしっかりした塩味!おやつにそのままかじったら止まらなくなりそうだ。
つけ汁はかつお他の海系ブレンドのようで濃い目。
正直、取り立てて美味しい!という訳では無い。だけど子供でもお年寄りでも食べ易いその味は、まさに
生活に根付いたうどん。カウンター内のパートっぽいおばちゃんの人柄そのものだった。
私達とほぼ入れ替えに近所の中学生らしき男の子が4,5人入ってきた。慣れた感じで賑やかに
『特大』『特大』『大』『・・・小』
『え〜っ!おまえマジで!?特大食っとかなぁ』
そんな会話を交わしながら、菓子パン1個と牛乳の値段でうどんがお腹一杯食べられるのだから、食べ盛りの
男子には最高の土地だ。この店にはこうやって毎日、近所の人々がお腹を満たしにやって来るんだろうな。

空腹にようやく炭水化物を入れた事で皆元気になり、次へ向かって車を走らせる。
11号線を少し戻って河の手前をきゅっと曲がって・・・細くて怪しい道になってきたなぁと思った矢先、あっさり
その店を発見。ここが第一の本命”六車”だ。
時間は11時20分、開店まであと10分か・・・。とりあえず店の前に車を留めると入り口が二つ?
一つは食べる方の店の入り口、もう一つはお土産屋の入り口らしい。お土産の方は営業中になってたので
とりあえず入る。ラインナップはうどん以外もなかなか豊富だった。時期が時期だけに、予約の名前を貼った
お中元の箱も沢山積んである。食べてみて気に入ったらここでお土産を買って行こう。
時計が11時27分になったので食堂エリアに行き(中でつながっていた)、『もうイケますか?』と声をかける。
もちろんこの日一番乗りの客である。すると愛想の良いおばちゃんが
『どうぞ。ちょっとお時間かかりますけど座って待ってて下さい』
湯がきたてのうどんの為ならナンボでも待ちまっせ。店内はテーブル席の他、壁に向かったカウンター席もあって
結構な人数が入れそうだ。うどんを待っている間に作業着姿の青年が一人、買い物帰りっぽいおばちゃんが
また一人。二人がガラスケースから取ったちらし寿司が美味しそうで、少し心が揺らいだ。
暖かいかけと釜抜き(釜たまの変形バージョン)を頼んだ友人2人の分が先に出てきた。冷たいぶっかけを頼んだ
私の麺は、少し長めに茹でられているのだろう。このタイムラグがリアルでわくわくする。
出てきた麺の姿は何とも色っぽかった。太目で透明感とツヤのある表面に、ネットリヌルヌルな質感。せくすぅい〜!
茹でたてホヤホヤという事も大きかったのかもしれない。
別の小皿に乗ってきたネギとショウガを乗せすだちを絞って、ズルッと一口・・・うおぉ、不思議に気持ちよい食感!
見た目通り表面はヌルヌルムチムチ感があり滑らか、故にソフト系の麺かと思いきゃがっしりした噛み応えのある
強いコシ!コシは数ある店の中でも強い方に入ると思う。でも表面の滑らかさのおかげで、どんどん入っていく。
その独特なノド越しが何だかとっても気持ち良く、あっと言う間に平らげた。あ〜セクシーうどんbPや〜。
感動に包まれて3人が我に帰った時、店内はいつの間にかほぼ一杯だった。私達ような遠征組ではなく、やはり
地元民らしき人ばかり。地元民のテリトリーにお邪魔しているからには、迷惑にならないように振舞うのがマナー。
食べたらすぐ出るっ!ごちそうさまの言葉とお土産の買い物は忘れずにね。

しっかりした麺を良く噛んで食べると満腹感はひとしおである。消化も兼ねて少し長距離を移動する事に。
目指すは高松市。”あたりや”が美味しいよ!と聞いていたので素直に向かう。胃袋的にも時間的にも後一軒が
限界。失敗は絶対にしたくない。悔しいけどどうがんばってもいつも3軒が限界だなぁ・・・。
山沿いの道は相変わらず車が少ない。真昼間だというのに点滅している信号。極めつけは堆肥の無人販売所!
これを最初に見つけた時は全員目を疑った(笑)。その後もまた見かけたので、ひょっとして香川ではメジャー!?
のどかだ・・・とてものどかだ。空は青く山は緑。大阪に越してからは空気の美味しさも一際嬉しい。
市内に近付くにつれ車が増えてきた。香川の車はスピードは遅いがなかなか大胆な運転をする(ような気がする)。
11号線を延々と走り・・・そろそろこの辺なんやけど。情報ではパチンコ店の地下駐車場らしいぞ。
が、パチンコ屋なんてどこにも無いぞ?でも地図は合っている。人気店なのでつぶれたとも考えられない。
Uターンして車内から再び目を凝らす。あったぁ!駐車場の入り口に”あたりや 営業中”とだけ書いたちっちゃな
立て看板!パチンコ店を探していたから見落としたのだ。そこはもはやスポーツクラブに変わっていたのだから。
時間は1時半。2時までの営業時間に間に合って本当に良かった〜。

急な坂を下りてだだっ広い地下駐車場へ。区切られた、一台分のスペースもやけに広い。車を降りてもう少し奥に
行くとプレハブの小屋に”あたりや”の文字と的のマークが入ったのれん。うわ、こんな所にホンマにあった!
お昼をとっくに過ぎているのに店内には5,6組のお客の姿。ここもセルフで、入り口でおねえさんに注文する。
メニューはひやひや、あつあつなど麺と出汁の温度の組み合わせで付けられている。私は冷たい麺に熱い出汁の
ひやあつを選択。その後天ぷらケースの前へ。もうここが最後と決めたのだから、欲望のままに天ぷらを取るのだ。
ちくわと大きなゲソとの間で心が引き裂かれそうになったが、ここは初心者らしく名物のゲソ天を。席を確保すると
すぐに呼ばれてうどんが出てきた。
どんぶりの中には細めでエッジの立ったうどんと薄い色の出汁。ツヤ感はあまり無いが、今まで見た事無いほどに
角がしっかりした、シャープな麺だった。テーブルの隅をふと見るとおろし金とショウガ。好みで自分で擦って入れる
という事か。早く味わいたいので別に要らん。
一口すすると、シャープなエッジは口の中でもしっかり主張した。なんて鋭角的な食感!するーんと入ってきた麺を
かみ締めると・・・うむ、程よいコシ。思ったより強く無い。ちょっと残念な予感が確信に変わった。
茹でられてからちょっと時間経ってるな・・・
出てくるのが早かった時点で『あれっ?』とは思った。さらに透明感とツヤの無さもちょっと気になっていた。
お店によって見た目もコシも千差万別なのは分かっているが、元々そうなのか、時間が経ったからそうなったの
かは食べてみれば確実に分かる。それでも充分”美味しい”と思えるのだから大したうどんだが、それだけに
やっぱり出来たてを食べたかった。次に入って来たお客さんが待たされているのがちょっと羨ましかったな。
出汁は色も味も澄んだいりこ出汁。個人的には塩気が少し強いと思ったが、味そのものは自分ランキング一位!
天ぷらのイカも柔らかく、ぶっとい足もすんなり噛み切れた。それでも食べ難い〜という人は天ぷらケース内に
あるキッチンバサミを使ってね。厚めの衣が出汁を吸えばコレまた最高。出汁まで全部飲んで美味しい山の水を
飲んで・・・『ふ〜っ、今日のミッション終了!』
3人共もう何も入らないという程の満腹感、味にも満足してまさに大満足の極みであった。
食器を返して天ぷらを自己申告して、お会計¥350也。もうすぐ閉店というのに、最後までお客さんが途切れ
ないのはさすが人気店。駐車場を出ると、すでにちっちゃな看板は下げられていた。
営業時間外に前を通っても、絶対にここにうどん屋があるとは気付くまい。街中の秘境、絶対もう一度来たい。

そんなこんなでお初の店ばかりを周って、充実した旅だった。タイミングのせいもあって今回は六車が私の中で
一番だったが、この運任せなところも生き物であるうどんの醍醐味。あたりや、絶対にいつかベストな麺を
食べるぞ〜!
うどん以外の物を胃に入れたい・・・という意見が一致してコーヒーを飲みに行く事に。日差しが強かったので
屋内駐車場を数件周ったのだが・・・ことごとく高さ制限155cmに引っかかり入れられ無い〜(泣)
車を出してくれた友人は、パジェロミニで入れないのは初めてだと言っていた。確かに私もびっくりした。
香川では車高の低い車が好まれるのかしら・・・最後まで裏切らないカルチャーショックを与えてくれた香川。
うん、やっぱり好きよ。今も家でうどんを茹でながらニヤリとしてしまうのであった。


                                                    終わり