10月13日  ヴァラナシへの道

楽しみな朝が明けた。午前7時、自然に目覚めてこの時間とは!ん〜健康ってすばらしい♪今日はヴァラナシに向けて出発する。

昨晩会った青年実業家アブとの約束は9時なので、顔を洗った後バス・スタンドにチケットを買いに行く。外は早くも熱気が渦巻いている。

チケット売り場はまだ閉まっていたが、売店のおっちゃんが言うにはチケットなどなくても乗れるらしい。

「それよりコーヒー飲んでけ。サービスタイムやから。」

上手いなぁと思いながらもそれに乗ってしまう。味も色もすごく薄いが香ばしいコーヒーは砂糖たっぷり。インドで甘くない飲み物ってミネラルウォーターだけなんかな?

まったりした後「ごちそうさま〜」と去ろうとすると、今度は水買っていけ〜と言う。

「今買うと重いからバスに乗る前に買う」と答えると、「約束やで。」とさわやかに握手を求められた。(ちなみに守った)

ホテルまでの帰り道、すっかり好物になってしまったサモサの屋台を発見。

「朝ゴハン入らなくなるかな〜」と言いながら調子に乗って激甘の揚げ菓子まで購入。

起き抜けにこんな重いものを食べるのも、普通になってしまっている。(だからお腹壊す)

チェックアウトを先に済ます。オーナー団吉は「やっぱり行ってしまうのか・・・」と何故か名残惜しそうだ。

9時ちょうどにアブは中型バイクで迎えに来てくれた。ノーヘルで3人乗りをしても誰にも怒られない。いい国だ。

太陽がぎらぎら照りつける昨日のレストランの屋上で、チャイとマサラオムレツを頂く。おやつの後でも美味しい物は美味しい。

彼はインドのいわゆるエリートのようで、とても難しいという政府公認の観光ガイドの資格を持っていた。

朝食後、西の寺院群へ一緒に行きかいつまんでだが説明をしてくれた。

知らずに見ると同じに見える彫刻達は実は微妙に違っていて、一つ一つにちゃんと意味というか、ストーリーがあったのだ。

細部に至るまで本当に芸が細かくて、遊び心にあふれている。知らないで見ただけならもったいなかったと思う。

しかしインド人って昔からマメというかお茶目というか何というか・・・感心してしまった。

もし皆さんが行かれる時は、是非ちゃんとしたガイドを雇われる事をお勧めします。(エセはダメですよ〜)

     
気が付きゃこんな写真がいっぱい。帰ってきて見るとどれがどれだか分かりませ〜ん。         商売の神様、ガネーシャ様

古代人のお仕事に感心した後は、曼荼羅を見せてくれるというのでアブの店へ。今日は休みなのか中は真っ暗だ。

日本フリークの彼は、¥100ショップで買ったという湯のみで日本茶を出してくれた。

奥の間のようなところに案内されて、いよいよ曼荼羅が登場する。ここでようやく、なんでこんなに親切にしてくれたのかが理解できた。

高額な商品を買ってもらうには、それなりのおもてなしをしなきゃ、というワケ。

多少興ざめしなかったとは言わんが、本物の曼荼羅のすばらしさはため息ものである。

宝石を研磨した時に出る粉で作るという絵の具の色は実に鮮やかで、その細かさや仏様の表情に見入ってしまうてんちょ。

問題は値段である。いくら日本で買う何分の一と言われても、一番安いもので6〜7万はする。

帰国後に引越しを控えていたてんちょは『見るだけ〜』と自分に言い聞かせたのだが・・・。

結局ある仏様を熱愛してしまって、日本にお連れすることにしてしまった・・・。

あまり細かくない図柄で比較的安い絵だが、仏様のお顔は最高だと思う。ま〜買いたくてもなかなか手に入らへんものやしね。

ホクホク顔のアブは車でバス・スタンドまで送ってくれて、さらにチャイをごちそうしてくれた。ま〜そのくらいしてもらってもバチは当たらんでしょう。

ジャンシーからやって来る観光客を捕まえようと、辺りには各ホテルの客引きがわらわらと。その中にはリクシャ団吉の姿もあった。

やがて、何でまだ動いてるのか不思議になるボロバスが入ってきて、私達2人は乗り込んだ。

とうとうお別れね・・・しかし時間を10分過ぎても20分過ぎてもバスは出ない。そもそも運転手の姿が見当たらないのだが。

ようやく『ごめんねぇ〜』という感じで走ってきた運ちゃんはイスラム教徒。

どうやらお祈りの時間だったらしい。

息も絶え絶えな音を出して走り出したバスに向かって、アブは長い間手を振っていた。どこまでも優しくて紳士的。

そりゃ、ころっとインド男に騙される日本人女性も居るやろな〜と妙に納得してしまったのであった。

バスの運転席。これでも立派に現役です。

話には聞いていたが、鉄道の駅があるサトナまでのバス道はかなり最悪なコンディション。

おまけに途中のバススタンドでぼろぼろの男共(おそらく下層カースト)がぎゅ〜ぎゅ〜に乗って来て、半泣きの4時間半となった。

乗車率150%を誇るおんぼろバスは、重さのためにスピードもへぼへぼ。長い道のりの途中にはエンストして乗り捨てられたバスが点々と・・・。

どうでもいいからとにかく無事に着いてくれ〜と思ってると突然停車、なかなか動かない。ま、まさか!

どうやらイスラムのお祈りの時間らしい・・・。

駅に着いた時には真っ暗になっていたが、とにかく列車に間に合うように到着した。

何もない田舎だと聞いていたが、さすがにヴァラナシへの乗り継ぎポイント、人々がごった返す大きな駅である。ここから夜行列車に乗るのだ。

興味深げに寄ってきた10代とおぼしき4人の男の子がホームへと案内してくれる。

ホームで待っていると、息子を連れた初老の男性が「わしらも同じ汽車に乗るから安心しなさい。」と笑顔で言ってくれた。

金銭が絡まなくても優しくしてくれる人もいっぱいいる、それもインドなのだ。

ちなみに初老の男性とはヒンディー語と日本語でコミュニケーションした。

言葉が通じなくても気持ちで意思が通じるというのは、インドへ来て初めての経験の一つだ。

2等寝台の席。普通の座席の背もたれを倒してベッドにした状態

と、鉄道警察員だという男性が車両を案内すると声をかけてきた。

「ネパール人か?それともフィリピン?コリア?」

何でジャパニーズに見えへんねん・・・と気を悪くしてると列車が来た。すると彼は付いて来いと言っていきなり走り出した!

初老の男性に挨拶する間もなく、多くの人の間を必死になって追いかける。いいかげん力尽きそうになったところで、ようやく自分達の車両に着いた。

失礼な鉄道警察員が走ったわけはスグに分かった。乗りこむとほぼ同時に汽車は動き出したのだ。

インドの列車はかなりの数の車両が順不問に長〜くに連結されていて、おまけに停車時間も短い。もちろん乗客が乗ったかどうかの確認なんて無い。

誰がどうなろうと知らんもんね〜という、この態度もインドである。

この日は1等寝台のチケットが取れず、インド人だらけの2等寝台だった。でもエアコンは付いていたし、思ったより快適に過ごせたと言える。

盗難が心配なので眠りはできなかったが・・・。

窓の外には明かり一つ見えない、深い深〜い闇がどこまでも続く。横になって眺めていると、何だか感傷的になってくるような闇だ。

列車は約8時間後には聖なる河の街、ヴァラナシへと私達を運んでいるはず・・・。

つづく